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〔半村さんのコンプレックス〕 ―清水義範の「半村良クロニクル」(29)

書きにくいことも少しは書かなきゃいけない。半村さんは学歴のことをどう受け止めていただろう。半村さんの卒業した両国高校は優秀な名門校で、卒業生のほとんどが大学に進学した。なのに半村さんだけは家庭の事情でそれをあきらめたのだ。ある時私が「それ卒論のテーマでした」と言ったら、「おれ、卒論なんか書いたことねえもん」と言われてヒヤリとしたことがある。また別の時には、「大学へ行って歴史をやりたかったな」ときいたこともある。半村さんはそんなコンプレックスから、繁栄を嫌い、上昇志向を軽蔑する人格になったのかもしれない。誰もが上をめざすから、この世は不幸でいっぱいになるんじゃねえか、というような。その思想は筋金入りだった。

清水義範

1947年愛知県名古屋市生まれ。中学時代からSFファンで、半村良氏の面識を得て上京する。1988年「国語入試問題必勝法」で吉川英治文学新人賞受賞。近作は「夫婦で行くイスラムの国々」や西原理恵子と共著(イラスト)の「学校よりおもしろい社会」など多数。
ファンサイトは「永遠の清水義範

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