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- 「闇の中の哄笑」―半村良を旅する(1)
「闇の中の哄笑」ハルキ文庫 ―半村良を旅する(1)
熱海からJR伊東線で終点伊東まで行き、そこから伊豆急でふたつ目が川奈。ここはゴルフ場が併設された高級リゾートホテルで知られたところだ。そのゴルフ場が殺人トリックの舞台になっているのが「闇の中の哄笑」だ。
明治時代にそのもとが造られたホテルと昭和初期に作られたゴルフ場は、さまざまな歴史の場面で登場してきた。実際に政財界の重鎮たちが利用していたホテルであり、たとえば日本の首相とロシアの大統領の会談も行われた。ゴルフの大会ではかつてはフジサンケイクラシック、現在はレディスが開催されている。
伊豆半島には珍しい洋風ホテルとして著名人の宿泊客が多いことでも知られていた。
物語は次期総理をめぐる争いに、嘘を武器に権力に立ち向かう「嘘部」たちが暗躍する。彼らはこのホテルに泊まり密談をし、プレーの最中に海に面したゴルフ場の崖から現職の総理を下の岩場に突き落とそうと目論む。
ハルキ文庫の「闇の中の哄笑」の47ページにはホテルの位置を示す伊豆半島の地図、そして187ページにはゴルフ場の見取り図が収録されている。小説の中のゴルフコースはこのホテルのコースに酷似している。もちろん崖から人を落とせるような危険箇所はない。
ホテルの屋根の赤い色からテラスか見下ろす庭やロビーなど内部の描写も正確で、ホテルの重厚さがよく書かれている。
ゴルフがお好きだった半村さんは、取材とは別にこのホテルで何度かゴルフを楽しまれたのだろう。
川奈駅から徒歩では40分ほどかかるが、途中の道からは眼下に川奈港が見下ろせる。ホテルのカフェテラスからは伊豆大島や初島、ゴルフ場の芝を眺めながらコーヒーとホテルブランドのフルーツケーキでブレイクを楽しむのがいい。春早い頃から桜が咲きメジロが囀り、夏は海のきらめき、秋には周辺で紅葉が楽しめる。冬はテラスの暖かさに心やすまる。
◎伊豆急行川奈駅下車、車で5分。
ホテルのホームページはhttp://www.princehotels.co.jp/kawana/
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